「サラリーマンと農家は変わらない」農業 の職業選択のハードルを下げる「雇用就農」とは
Case05-大野幸一さん-
農家一筋25年。家族で経営することがまだまだ一般的で、年々農家戸数が減っている中「農業に興味を持って少しでも仕事にしてみたいと思っている人が、一般の職業と同じように農業を選択してほしい」と、熱い想いをクールに語る。
親の代から法人化した農業をしていて、現在約20ヘクタールほどの広い農地で「じゃがいも」「かぼちゃ」「スイートコーン」「麦」など、さまざまな食材を育てている。
「僕は家が農家だから選択肢の1つに農家があった」
農家という職業が身近にあったからこそ選択することができ、農業の魅力に触れて、現在も仕事にできているのだと思います。まずはやってみなければ、好きか嫌いか判断できませんからね、とのこと。
一般的な家族経営の農家に、新規就農が目的で農業者として自立したいという気持ちで、入ってくる研修生は多いのですが、農業に興味のある人が普通に職業として農業を選ぶことは、まだまだハードルが高いですねと語る。
しかし、大野さんの想いは、農業が抱えている現状の逆であった。
「農業に興味を持って少しでも仕事にしてみたいと思っている人が、一般の職業と同じように農業を選択してほしい」
そんな気持ちで導入したのが「雇用就農」という新規就農を目指す研修生以外にも、農業に興味のある人を採用する制度を八天ファームは取り入れている。
「まずは農業をやってみてもらって、栽培の技術や対人関係に自信がついたら農業をやってみようという人が出てくれば応援したい」
やると決めた人しか、働くことが難しい農業。そんな中で興味を持って少しでもやりたいと思ったら挑戦でき、持続して自信がつき、やりたいと思ったら独立もすることができる雇用就農。そこには大野さん自身、農業が身近な存在で実際に仕事をする中で農業のやりがいや楽しみを感じ、今に至る経験をたくさんの人にしてほしいという、気持ちの表れだろう。
「農業も他の仕事と変わらないですよ。現在、研修生1名、雇用就農1名が働いてくれています。彼らも前職は農業とは全く違った職業で、前職での経験をここで活かしてくれていますよ」
結局は、他の仕事と同じですと語る大野さん。その言葉は農業に興味を持ち、やってみたいと思う人の背中を押す一言になるだろう。また農業も一般的な職業と同じように選択してほしいという気持ちの表れとも感じた。
幼い頃から豊浦の地で育ち、この環境が当たり前だと思っていたが、研修生にこの町を選んでくれたのはなぜか聞いてみると「この町はいい町だよ」とみんな口を揃えて言う。なぜなのか自分の目でも確かめるために色々な土地に足を運んでみると、豊浦は「海もあり、山もあり、程よく田舎で、街にも出やすくて、程よく北海道」なのだと気付いた。
豊浦は海があり山があり畑がある。それらから採れる食材は実に美味しく農業漁業大国北海道を感じられる場所であり、北海道の中央都市「札幌市」まで車で約2時間とアクセスも良好。広大な土地を誇る北海道を凝縮した豊浦だからこそ言える「程よく北海道」なのだろう。
「農業も他の仕事と変わらないと思います。しかしこの広い畑や空の下で、生きているなと感じる職業です。まずは見学…良ければ一緒に仕事して、この大地を体感しに来てくれればいいなと思います」
農業は他の職業と変わらない。まずは土に触れ、農業の魅力を感じてほしい。その際にこの豊浦の地で農業することの魅力も感じてほしい。そんな大野さんの思いや人柄としての魅力が詰まったメッセージであった。